昨夜、夕食の片付けが終わってリビングのソファで一息つき、カールさんと会話していたときのこと。
彼の脳梗塞を知った直後に私のことを『ウクレレ』で鮮明に思い出したことがあったので、ひょっとしたらウクレレで私のことを思い出してくれるんじゃないかしら?もし私のことを思い出せたら芋づる式に他のことも思い出せるかも?!
と思い、久しぶりにウクレレを出してきて彼との思いでの「The Rose」を弾いてみた。
やっぱり覚えていなかった。
「いい歌だね。上手だ。」
と。
「あなたがウクレレを教えてくれたんだよ。」
というと、
「ホントに?僕が???」
「でも僕はもう音楽は無理だよ。」
と。
曲が曲だけに、あんなに音楽が大好きでどんな歌でも知っていた彼がこの曲さえ思い出せないなんて・・・と思うと「絶対に彼の前では泣かない!」と心に決めていたのに涙があふれてきた。
あんなにテニスと音楽に情熱を抱き、どれだけプレイしても飽きることも疲れることも知らず、何年も、何十年も愛し続けてきたのに、どんな音楽が流れても何の反応もない。
テニスをしていたことも自分の仕事も思い出せない。
「私たち、以前付き合っていたことは覚えてる?
と尋ねると彼は驚いていた。
「以前は私のことを深く愛してくれていたんだよ。最後に喧嘩して出ていったときも「愛してる」という言葉と手紙を残していってくれたんだよ。もう今は私のことは愛してない?」
と尋ねると、
「君のことは好きだけど、でも君が誰なのかわからないから・・・ごめんね。」
記憶を失っても以前と同じようにカードを買ってアーニーと私にプレゼントしてくれる。 性格は変わらないのね。笑 |
過去の経験や思い出を失ってしまっただけでなく、過去のスキルや技術も、そして今までに抱いていた感情や情熱までも失ってしまったことにはっとさせられた。
当たり前のようにいつもギターを弾きながら彼のオリジナルソングを歌ってくれていた、あれはもう過去のこととなってしまい、もう二度と聞かせてくれる事はないんだ、と思うと胸が締め付けられた、
そうなんだ。
記憶を失うということは過去の記憶を失うだけでなく、思い出も経験も積み上げてきた技術やスキルも、そして以前抱いていた人や物への感情も失うってことなんだ。
私がそれまで考えていた「記憶喪失」とはまったく比にならないほど現実は深い傷と痛みであることに初めて気づかされ、昨夜は寝るまで涙が止まらなかった。
カールさん、ごめんね。
なんの力にもなってあげられくて。
思い出の一つもシェアできなくなってしまったなんて。
それは切ないね、一緒に体験した思い出を共有できないなんて。ウクレレなんかは自転車みたいに忘れることのないマッスルメモリーかもしれないから、リハビリを続けていけばもしかしたらもしかするかもよ。
返信削除記憶もそう。何かがきっかけになって急に思い出したりもするだろうから、絵のふむちゃんお得意の毎日コツコツをやっていくしかないよね。時々涙が出ちゃってもいいんだからね!
返事が遅くなりました。ごめんね。><
削除思い出を共有できなくなったこともそうだし、私たちの記憶に残っていることについて話したり、その続きの話もできなかったり。テレビやドラマで見ていた記憶喪失って「記憶が消えてしまうこと」と単純な見方しかしてなかったけど、経験も思い出も積み重ねてきたものも、経験を積んでできるようになったスキルも、感情も、すべて本当にすべてを消し去ってしまうんだ・・・とその記憶喪失の奥深さに初めて気づいたよ。
マッスルメモリーでギターやピアノ、テニスを思い出してくれたらいいけど、今は身体的にも障害が出ているので無理だし、時間が経てばたつほど忘れてしまうんじゃないか。もし一生身体が回復しなかったら?と思うと悲しくなっちゃってね。T_T
昨夜は思い出せないお姉さんから電話がかかってきて、切った後に「なんだか少し記憶が戻ってきてるような気がする」って。実際に何か思い出せたわけではないんだけど、日常の癖とかルーティンとか、意外と覚えていてびっくりすることもあるからマッスルメモリーではないけど、身体にしみついてることは思い出せるのかもしれない!
Incredible sight!
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